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 休日の昼下がり。太陽が出ていて良い天気だというのに美優は家で頬杖をついてぼうっとしていた。はぁっと息が漏れた。
 そのみと揉めてから一週間が経つのにいまだ彼女から連絡はない。統一戦の件どうなったんだろう。ダメだったとしても結果は伝えて欲しいのに。でも、あたしの方から聞く気にはなれないしなぁ・・・。
 そのみのことが気になって何も手がつかない。
 携帯電話の着信音が鳴った。手にしてみると、そのみからのメール着信だと分かり、唇を真一文字に結んだ。息を飲んでから、メールの内容を開いた。
”三時からテレ朝に出るから見てね。絶対だよ”
 美優は脱力して後ろに倒れた。天井を見ながら、息をついた。
 テレビってそれより先にあたしに伝えることあるんじゃない。
 見るもんかと美優はごろりと腕枕に頭を乗せてふて寝をする。
 あ~あ、テレビに出るってタレントじゃないんだから、ちょっと出過ぎじゃない。
 いつもなら思わないことまで不満で出てしまう。
 見るもんかと何度も口ずさみながらも、三時になると、気になってテレビをつけてしまった。たしか、マスコデラックスの部屋という生放送のトーク番組だ。前にゲスト出演するとそのみが言っていた。
 画面には、そのみの姿が映っている。ソファーに座って、司会者のマスコデラックスと話をしている。
「あなた、ボクシングのチャンピオンなんですってね。普通の娘に見えるのにすごいわねぇ」
 おネエキャラであるマスコデラックスが、カマ言葉で大げさに感嘆しながら話をふる。
「そんなことないです。それに、わたし一番強いわけじゃないですし」
 そのみは温和な表情で応じるものの、その返答の内容には違和感があった。美優は起き上がり、テレビに集中を向ける。
「あらっ一番じゃないの?でも、あなたチャンピオンなんでしょ」
「ボクシングはメジャー団体が四つあるんです。だからチャンピオンも四人いて」
「そうだったの。でも、他のチャンピオンと同じくらい一番強いと思えば良いんじゃない。駄目かしら」
 マスコデラックスが前向きな捉え方を促すけれど、そのみは首を横に振った。
「高橋美優選手も世界チャンピオンなんですけど、わたしは、二年前に高橋美優選手に負けているんです。だから彼女に勝たないとチャンピオンという気がしなくて」
 美優がぐっと顔を前にのめりだす。
「そうなの。悔しい思いをしたわけなのね」
「あの・・・宣言させていただいてもかまいませんか」
 胸の鼓動がどくんどくん高鳴る。
「あなた、意外と大胆なのね。好きにしてかまわないわよ」
 そのみが真正面を見る。両腕を握って胸元まで上げた。
「美優~、わたしはあなたと試合がしたい。お互いのベルトをかけて統一戦をやろう!」
 美優も目を輝かせながら、両拳を握った。
 これってみんなが見てる前でのあたしへの挑戦状だ。
 美優は立ち上がり画面のそのみに向かって心の中で応えた。
 リターンマッチの申し出、ちゃんと受け止めたからね、そのみ。
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小説・その花は強くて優しかった | コメント(0)
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